お知らせ

SPARKお疲れ様でした。

とらのあなに色々と委託中です。ウィルグラ再録本ウィルグラ本ベアトリクス乱交本

2016年3月4日金曜日

ウィルがグランに苗床キメセクして想像妊娠させた話 後編

後編 妊娠編

 二ヶ月後。
 グランはふらふらとした足取りで、グランサイファー号の甲板の見回りをしていた。
 気持ちが悪い。
 胸がムカムカして、吐き気がする。食欲はない。
 頭は常に熱っぽく、ボーッとしている。
 最初は風邪かと思ったが、それにしては、喉や関節の痛みが全く無い。
 それがここ数日、毎日続いている。原因は既に分かっている。とても人に言えたものじゃないが、今ではグランサイファー号の誰もが知っている。

 グランは妊娠していた。
 それを告げたのはアルルメイヤだった。
 アルルメイヤは予言が良く当たる占い師だ。グランの不調を憂い、占った結果だった。そして、それは当たっていた。

 ウィルがそれを知ったとき、「ああ……! 神の恵みと祝福に感謝します!」と叫んだ。
 グランの妊娠とともに、お腹の子の父親がウィルだということも団員達には知れ渡ってしまった。
 グランが危惧していたのが馬鹿らしいほど、グランサイファー号のみんなは暖かく事実を迎え入れてくれた。
 特に、軍隊経験のあるバウタオーダやデリフォード、パーシヴァルに加え、もと山賊のガルマなど、男だけの世界だとままあることだと、グランが恥ずかしくなるくらいに気遣ってくれた。
 他にも、カタリナやオイゲン、ラカムのいつもと変わらない態度も有難かった。カタリナに想いを寄せるファラやヴィーラも同じだ。

 段々と大きく重くなるお腹を、グランは軽くさすった。ルリアが心配そうにそれを見ていて、その隣にいるビィが言った。
「グラン、大丈夫かぁ? あまり動き回らないほうがいいんじゃねーか?」
「大丈夫、朝は調子が良いんだ」
「しっかし、グランが妊娠とはなー。しかも相手が変態の兄ちゃんっていうじゃねーか」
変態と言われたウィルは、いつものことのように気にしていない。ルリアが笑顔でウィルとグランを交互に見た。
「いいじゃないですか。二人とも幸せそうで」

ビィがウィルを見て言う。
「ところで、兄ちゃんはソレ何してるんだ?」
「グランの大変さを分かち合おうと思ってね」
ウィルは重いカバンを腹の位置に持ってきて、ベルトで固定している。妊婦のつもりらしい。
「これは足元が見えないね。転んだりしたら大変だ」
「まだそこまで大きくないから大丈夫だよ」
「はぁ……おいら、グランが嫁に行った気分で寂しいぜ」

ウィルはハッとしたようにグランを見た。
「そうだ! 僕としたことが、結婚がまだだったね」
「結婚って……男同士じゃ……」
「大丈夫、僕が司祭を務めるから」
ウィルはカバンの中から聖書を取り出して、朗読を始める。
「死が二人を分かつまで、健やかな時も、病める時も、お互いに愛し合い、慰め合い、助け合い、尊敬し合うことを誓いますか? 『はい!』」
 ウィルは一人で結婚式を始め、グランを促す。
「さあ、グラン君も続いて。『はい』って」
「うわぁ……ロマンもへったくれもねぇ結婚式だな」

 そんな言葉を交わしていると、グランが甲板に出ているのを見て、他の団員達が集まって群がる。
「グランちゃん、体は大丈夫?お姉ちゃんがマッサージしてあげようか?」
「見回りくらいアタシが替わるわよ。あなた一人の体じゃないんだから休んでて頂戴!」
「にんぷさんはひんけつになりやすいってきいて、ヤイア、レバーいりのチャーハンつくってみたの」
「胎教に、僕が一曲歌おうか?」
「では私は兵法の読み聞かせを」
「我輩も愉快な冒険譚を聞かせたいのである!」
「これでも修道院でお産のお手伝いしてたのにゃ~☆ 何でも聞いてにゃ~☆」
たちまちグランは輪に囲まれ、賑やかになる。
「みんな、ありがとう。お願いするよ」
グランは団長室に戻り、全員に世話を焼いてもらう。毎日、代わる代わる色んなメンバーがやってきては同じことの繰り返しだ。

 部屋のテーブルの上には、団員達からのお祝いの品がわんさかと乗っている。ガラドアが赤ちゃん用のガラガラを作ってくれたり、ライアンが犬のぬいぐるみを作ってくれたり、アギエルバがおくるみをくれたり、イオが赤ちゃんの服を見繕ってくれたり、ジャスミンがお腹の張り止め薬をくれたり、ローアインが滋養のある食事を作ってくれたり。

 グランは嬉しく思いながらも、大袈裟だよと困り顔だったが、ウィルは「みんなお祝いしたくて仕方ないのさ」と感謝しながら受け取った。

 全員が帰った後で、ウィルはグランをベッドに座らせると、自分は床の上に座ってグランのお腹に耳をぴたりと付ける。
「胎動はまだかなあ」
「えっと、想像妊娠だから、そこまであるか分からないよ?」
「いいんだよ。グランとお腹の子に、神のご加護を」
ウィルはグランのお腹の上に手を置く。そこは腹帯という生成りの布が巻かれている。プレゼントしたアニラいわく、東の国でお腹を守る物で、安産祈願が込められているらしい。
「それにしても、想像妊娠だっていうのに、つわりがあるのは辛いね」
「もう少しの辛抱だよ。もうすぐ産めるからね」
「うん」
グランは力なくそう応え、ウィルの手の上に自分の手を乗せた。


 人生、何が起こるか分からないからな。と、恋人が病床に臥せっているヴァンツァにやや不吉なことを言われ、グランとウィルは肖像画を描いてもらうためにルナールの部屋を訪れていた。

「マタニティフォトっていうらしいわよ」
ゴスロリチックな衣装に身を包んだハーヴィンの少女・ルナールはおもむろに部屋の鍵を閉めると、グランを椅子に座らせ、ウィルにポーズをとるように強要した。

「もっとくっついて。そう、抱き合って!」

ルナールの目はキラキラと輝いている。
 筆が乗っているらしく、凄いスピードで大量にスケッチを量産していく。

「ルナール君、そんなに要らないよ?」
「大事な記念絵だから、いちばん良く出来た絵をあげるの」
「たくさん描いているのに、くれるのは一枚だけなのかい?」
ウィルが意地悪を言うと、ルナールは挙動不審になった。
「そ、そういうものなのよ、絵はいろんなものに左右されるから」

この機会に自分用にスケッチを溜めておこう。そんな目論見を見破られたのではないかとルナールルは焦ったが、ウィルは興味なさげだった。

「僕としては、どうせなら魔物の絵を描いて欲しかったなぁ」
「いつでも描いてあげるわ」
「本当かい!?」

ウィルが食いつくと、ルナールは静かに頷いた。
貴重な絵を描かせてもらったのだから、と心の中で付け加えて。
20枚ほど量産してから、ルナールはグランに言った。

「団長さん、甲冑を着てみない?」
「甲冑? どうして?」
「え、ええと……甲冑を着たら、丈夫な子が生まれるっていうジンクスがあるの」
「それは初耳だねえ」
ウィルは聖職者として色んな人と接した経験から、ルナールが嘘をついているのを見抜いていたが、その真意までは分からない。
 ルナールは甲冑を着た男子に萌えるという性質を持っていたのだ。

グランは、比較的お腹への負担が少ないランサーの鎧に着替え、二人は再び絵をかいてもらう。
そんなこんなで、後日にきちんと完成した絵を届ける、とルナールは約束し、その日の出来事を終えた。



 夜半、ウィルはある団員の部屋を訪れた。
 部屋の主は、大量の本と実験器具に溢れた部屋の中、偉そうにミニスカートの下で足を組んでウィルを迎えた。

「グランが妊娠したことは君も知ってると思うけど」
ウィルは早々に本題を切り出す。
「僕とグランの子供なんだ。君の力で、なんとか生き物として生み出せないかな」

目の前の美少女、天才錬金術士のカリオストロは自信ありげに頷いていたが、きっぱりと断った。
「お前、気持ちは分かるけどなー。それは無理だぜ? だって、その魂は想像上の物なんだからナァ」

カリオストロは皮肉げに笑い、片手を肩の高さまで挙げるとひらひらと手を振る。
「俺様は完璧な容れ物(ボディ)を作ってやれる。でも、肝心の魂がない。ないものは移せないぜ」
「そうかい」
「そーいうこった。気の毒だけどな」

頼られたことはそれなりに彼の自尊心を満たしたらしく、カリオストロは少しばかりウィルを気遣って見せた。
 ウィルは挨拶を交わして部屋を出る。
 このことは、グランは知らない。



 団員たちが外に出れずに暇している雨の日。
 サルナーンの催眠暗示により、グランの出産が行われた。
 本来の出産日である十月十日(とつきとおか)にはまだまだ早い時期だったが、想像妊娠であるし、グランの体調を考え、随分と早い分娩になった。
 術中はずっとウィルがグランの手を握り、儀式は無事に終えた。
 ウィルとグランの手に、生成りの生地でできたおくるみが渡される。もちろん、中にいるはずの赤ちゃんは存在しない。
 ウィルは空のおくるみを見て、ほんのわずかだけ、顔を強張らせた……ようにグランには見えたが、「神に感謝します」と聖職者らしいことを言い、すぐにいつもの柔和な笑顔を浮かべてそれを抱きかかえた。
 そして、この騒動は幕を閉じた。



「あれ、その布」
外出しようと準備をしているウィルの手にある小袋。それを見つけて、グランが言った。
 生成りの生地でできたそれには見覚えがあった。腹帯だ。
 ウィルは笑顔を向ける。
「こうして、赤ちゃんに使った布は違う物に作り替えて使う習慣があるそうだよ」
「そうなんだ?」

ウィルはもう一つ、同じ袋を鞄から出すとグランに手渡す。
「はい、君の分。お守りになるらしいよ」
グランは小袋を眺めた。不思議と心が温かくなるのをグランは感じていた。赤ちゃんは出来なかったが、産んだのは事実だ。

 グランはそれを大事にポケットの中にしまう。
「それじゃ、行こうか」
「うん」
ウィルが手を差し出し、グランは手を繋ぐ。

 ウィルの希望で、形だけでも子供が生まれたことを神に報告したい、ということで、着港した町の教会に行くことになっていた。

 久々に船を降りた下界の景色は、いつもより鮮やかに見えた。



 数日後、ルナールから肖像画が届けられた。
 そこには幸せそうな一組の夫婦が居た。
 受け取ったウィルはグランと喜びを分け合った後で、グラン妊娠観察日記の最後のページに挟む。
 日記を閉じると、心から大事な何かがすとんと抜け落ちたような喪失感を味わった。
 熱心に介抱していた魔物が死んでしまったときのような気持ちに似ている。
 らしくない、とウィルは思った。
 そんな気持ちを振り払うように、ウィルは本棚のグラン観察日記の一番端にそれを紛れ込ませ、外の風に当たるために部屋を後にした。