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とらのあなに色々と委託中です。ウィルグラ再録本ウィルグラ本ベアトリクス乱交本

2016年3月4日金曜日

[18禁]ウィルがグランに苗床キメセクして想像妊娠させた話 前編

前編 苗床編

「こんばんは。今日の用件は何?」
夕食後、ウィルに呼ばれ、騎空艇のウィルの部屋にグランは顔を出していた。
 ウィルは魔物研究家だ。
 ほんの少し前に、グランがルリアと命を分け合っていると知ってからは、グランに執心して研究・観察するようになり、グランはほぼ毎晩ウィルに呼び出されては生態や行動について熱心な聞き込みをされていた。そのうちに二人は親しくなり、強引かつ執拗なウィルのアプローチにより恋人の仲にまで発展していた。
 グランは部屋に入るなり、香炉から立ち上る濃密な麝香(じゃこう)の香りにむせる。
「これは魔除けなんだ」とウィルは言った。
クンフーの衣装に匂いが移りそうだな、とグランは自分の服を眺める。ノースリーブの丈の長いトップスに、黒いズボン。どちらもぴっちりと身体のラインに沿ったデザインだった。
 グランはふらり、と目眩がした。
 香りのせいで頭がクラクラする。

「この匂い、苦手かも」
「そうだろうね。闘虫禍草の胞子を混ぜたからね」
ウィルはさらっと言う。
「え……?」
「実はね。闘虫禍草の苗床状態っていうのが知りたくて、僕は自分で実験したんだ。でも、頭が馬鹿になっちゃってそれどころじゃなくてね。代わりにグランになってもらって観察しようと思って」
「なに言ってるの? ……ちょっと」

そう言う間も、グランの具合はどんどん悪くなる。

「僕は耐性あるから、このくらいは平気だけど」

視界が歪み、グランは立っていられずに座り込んだ。
 ああ、この感じ。ファラとヨダルラーハと、一緒に山へキノコ狩りに行ったのを思い出す。頭がおかしくなってしまって、仲間同士で殴り合った……らしい。
 すぅっ、と意識が遠のく。
「ねぇ、どんな感じ?」と、ウィルの言葉が聞こえたが、既にその言葉は理解できず、返事もできなくなっていた。



 ウィルは屈み込んだグランを抱きかかえ、ベッドに寝かせると、サイドテーブルを寄せ、ノートを広げて筆記具を手にした。
 グランは焦点の合わない目をしてぼうっと天井を見ている。
 ウィルが手をひらひらと目の前で振ると、グランはつられて目線を動かす。

「ここがどこか分かるかい?」
グランは目線をウィルに合わせ、何も言わない。
「???」
「君の名前は?」
「???」

ウィルはさらさらと筆記具を走らせ、ノートに記録を残していく。
 脳が苗床になったグランは、魔物の思考と同化していった。
 それは勿論、グランには自覚はない。
 そして、胞子を吸ったグランの頭は、闘虫禍草の意志に侵され、魔物の本能に従おうとしていた。

(こども……ふやさなきゃ)

 そうして身を起こすと、目の前の男ににじり寄り、グランは厚い聖服の上からウィルの股間に手をやった。

「おや」
ウィルはそれに動じずに、ノートに記帳していく。
『メス化。胞子が雌株のせいか』

ウィルはグランの手を退かすと、手袋を外してテーブルの上に置く。じゃらじゃらとした首飾り(パナギア)や外套を脱いで椅子の背にかけると、軽装になって、ベッドに座りなおしてグランと顔を付き合わせた。

「いいよ、セックスしても」

クンフー姿のグランを正面から見据え、身体に手を伸ばす。
 ウィルが腰に手を回すと、グランはビクリと反応した。すうっ、と腰のラインに沿って指先を這わせると、肌がかなり敏感になっているようで、小さく震えた。
『苗床状態で興奮、繁殖機能の向上か』
ウィルは淡々と記録を取る。
 グランの顎に手をやり、唇を親指でなでる。グランの頬は紅潮していて、熱っぽい目でウィルを見た。

「口を開けて」

グランがわずかに口を開けると、ウィルは指先を入れた。
 すかさずグランが舌を絡める。濡れた粘膜の感触がウィルの指先に伝わった。
 指先でグランの舌を掴んだり絡めたりして、歯列をなぞり、口蓋をくすぐる。そのまま指を出し入れしていると、ちゅぱちゅぱと水音を立てながら、またグランが小さく震えた。

「口の中も感じるんだ?」

ウィルは指を引き抜くと、今度は自分の唇でグランの口をふさぐ。いつもより少し体温の高い、生暖かく柔らかい感触だった。
 舌を突き入れると、グランは抵抗なく迎え入れた。指で弄ったように、今度は舌で口内を犯す。ぬめる舌を絡め、吸ったり軽く歯で噛んだりしていると、くちゅり、と唾液の交わる音が鳴り始める。そして、グランの身体はやはりビクビクと震えている。

 ディープキスをしながら、グランのチャイナ風のトップスをめくってたくし上げると、鍛えられた腹筋から胸筋まで指でなぞり上げ、桜色の尖りを捉える。そこは固く屹立していた。
 指の腹で押し潰すと、グランがぴくんと反応した。そのまま指先でこねるように突起を弄り回し、時折爪を立てる。
 グランの吐息は熱く早くなっていた。胸が気持ちよくて意識を持って行かれているのか、キスの動きが緩慢になっている。

 しつこく胸を愛撫していると、グランの舌の動きは拙くなり、ウィルの指から与えられる快感だけを受け止めていた。
 きゅむ、と乳首をつねると、グランの身体がびくつく。何度もそれを繰り返しているうちに、グランは一度、大きく身体を震わせた。
 ウィルはようやく唇を離す。ぷはぁっ、とグランの口から熱く湿った吐息が漏れ、二人の間に銀色の糸が垂れる。
 ウィルはグランをベッドに押し倒し、腰の上に乗る。クンフーの服を大きくはだけさせ、先程までさんざん弄り尽くしたそこを口に含む。強く吸い上げ、もう片方は指で摘む。指の腹と舌先でこね回し、すり潰すように往復させる。だが、尖り切った蕾は少しも柔らかくなる気配がない。

「ぅあ……」
グランが頬を紅潮させ、呻いた。
 ウィルが軽く歯を立てると、グランの背がぴくりと跳ねた。その反応に気を良くして、ウィルは愛撫を続ける。
 赤子が母乳を吸うように、ウィルは夢中で貪る。若くして騎空団をまとめ上げるグランの、程よく鍛えられた身体、しかし子供らしく未成熟な骨格、それが背徳感があってウィルは好きだった。

「……っふ……あぅ……ッ」
グランの口から甘い声があがる。息はあがり、熱く短い呼吸を繰り返す。うっすらと涙を浮かべた目はとろんと潤み、焦点が合わない。
 その兆候には見覚えがあった。
 胸の蕾に吸いついたまま、愛撫の手をするり、と下に向けて脇腹を触ると、グランの肌にぞわぞわと鳥肌が立つ。ゆっくりとお腹から脇腹にかけてを撫で回すと、身をよじるようにグランの身体が動く。脇腹はグランの敏感な部位だ。そこをさわさわと刺激しながら、フェイントのように乳首に歯を立てる。

「ふぁ……ぁん……んん……ッ!」
グランは陸に打ち上げられた魚のようにビクビクと震え、だらしなく開いた唇から甘い喘ぎを上げ続ける。そして、あっさりと終わりを迎えた。
今まででいちばん激しい矯正を上げ、身体を大きく震わせたかと思うと、そのままくたりと動かなくなった。

 ウィルは驚いてグランの身体を見下ろす。
「胸だけでイったのかい?」
ウィルはグランの股間に手をやり、クンフーのタイトなズボンの下に手を潜らせる。そこは萎えることなく固く屹立していて、射精した痕跡はない。
 それを手のひらに包んで軽くしごく。一度、出させてあげようと思って優しく愛撫してみるが、一向にその様子はなく、先走りすら出ない。
 ドライオーガズム、という言葉がウィルの脳裏に浮かぶ。射精せずに何度も絶頂を迎える、元々は女性の身体に組み込まれた性質だ。だが、一応、男でもそれは可能である。おそらくグランはその状態なのだろう。

 グランは荒い息を吐きながら気を取り戻すと、思案顔のウィルの袖を引き、上体を起こして顔を近づけて続きをせがむ。重ねられた唇から、くちゅり、と音を立てて入る舌をウィルは吸って返し、片手ではペンを走らせる。
『射精なし、完全に雌状態』

一度達したグランは既に欲情し切っていて、身も心も出来上がっている様子だった。
「ちょっと待ってくれるかい」

ウィルはサイドテーブルについた小さな引き出しを開けると、中から小瓶を取り出した。動物の油でできた軟膏。それは人間の皮膚にすぐ馴染むもので、本来の用途とは違ってウィルが性交渉に使用しているものだ。
 グランの黒いズボンを下着ごと脱がせると、指に軟膏を塗りつけ、向かい合った状態で下腹部に手を伸ばす。
 固く閉まったそこに指を這わせると、わずかにグランが身じろぎした。

「あふ……」
円の周りをするりと撫で、ゆっくりと人差し指を潜らせる。
 もともと何かを挿入する器官ではなく、排出するための部位だ。指を押し戻すような感覚が強く指に伝わるのを無視して、じりじりと奥へと進める。
 慣れた手つきである箇所を突くと、「ひぁっ」とグランが啼き、全身がびくりと跳ねた。
指を出し入れしながらそこを突き続けると、グランは眉根に皺を寄せ、身体を痙攣させ、熱い喘ぎをあげる。

「うぁ……あっ、んくぅ……ッ」
ウィルは円を描くように指を回し、段々と入口をほぐして広げていく。
 中指を増やすと、グランの表情が何かに耐えるようなものに変わったが、それも前立腺への刺激で蕩ける。
 ウィルはしばらくグランの表情を堪能していたが、グランの目線が何か言いたそうなものに変わり、それに気付いて指の動きを止めた。
「どうしたんだい?」
グランは苗床になってから初めて、このとき言葉を発した。



グランは虚ろな目を対面に居る男に合わせると、見上げて口を開いた。
「いれて」
呂律の回らない、どこか幼げな声。グランは自分の口から出たその言葉を、他人の言葉のように聞いた。

(こども、ふやさなきゃ)

苗床にされた脳味噌で、もはや命令となったその言葉にグランは突き動かされていた。
「こども……、ほしぃ……」
ウィルは金色に近いブラウンの目でじっとグランを見る。
グランは焦点の合わない目でウィルを見返した。
「人間の子供? それとも、茸の子供?」
その意味は理解できなかったが、唇は自然と動いて応えていた。
「きのこ」
「だよね」
ウィルはさらさらとノートに筆を走らせると、軟膏を手に取って量を増やし、グランの中に塗りつける。

 そして、ウィルは聖服の裾をたくしあげて下着を脱ぎ、固く上を向いた自身に塗りつける。潤滑剤のひやりとした感覚が伝わった。
それがようやく自分の中に入るんだと思うと、グランは嬉しくなった。ようやく生殖活動が始められる。
 ウィルはいつものようにグランをうつ伏せにさせ、腰を上げさせる。
 ゆるく開いた蕾に欲望の先端をあてがい、ゆっくりと挿入する。
 指を入れられたときのように、後孔の内壁が押し戻そうとしているところを、男は無理にズブズブと突き入れていく。
 そして、グランの敏感な箇所をぐりっ、と先端で擦る。

「……っひ……」
指で突かれたときと同様、グランは虚ろな目を開いて身体を震わせる。
下腹部から電気が背中を伝って走り、脳が痺れる。
 挿れられただけでこの状態で、動かれたらどうなるのか、通常なら恐れと期待に満ちるところが、今のグランには想像する能力が失われている。
 軟膏で潤ったそこは、くちゅり、と水音をたてて男の動きをスムーズにする。
 ウィルの雄が滑らかに前後に動き始める。

「……ッ!」
ゾクゾクと寒気に似た快感が全身に走って脳を刺す。それだけで達してしまいそうだった。
グランは反射的に気を達するのを耐えたが、ウィルの指が胸の突起を擦ると、前戯で嬲られた箇所が素直な反応を返す。二箇所からの刺すような快感に煽られ、グランは堪らずに痙攣しながら絶頂を迎えた。

「はーっ……はーっ……」
荒い息を吐いて整えようとしたが、男はそれを許さずにピストン運動を始める。

「……ぅあんッ……」
悲鳴に近い喘ぎをあげて、グランの思考は再び泥沼の底に沈む。
下腹部がじんと痺れ、すっかり敏感になった桜色の実を擦られながら、そのまま軽く数回達する。
 その間も男は動きを止めず、グランは休む暇もなく熱を与えられ、朦朧とした頭で呻いた。
 やがて乳首が刺激に慣れてくると、するり、とウィルの手が下に降りて脇腹を撫でる。

「ふぁ……」
新しい性感帯への愛撫に、グランの全身は再びビクリと震える。
「あっ、あぐ……んぅうっ……!」
身体も脳も熱で弾けるようだった。
 奥底が痙攣するような感覚を何度も味わい続け、グランは無意識のうちに目から涙を零していた。

「泣くほどいいんだ?」

ウィルが聞いたが、当然ながら理解することはできず、無様な泣き声で返す。
下半身の激しい突きに反して、手のひらの愛撫はソフトタッチで優しい。その触れるか触れないかの感触がグランの肉欲を煽り、再び意識は昇天する。
 ウィルがグランの首筋に唇を寄せ、がりっ、と軽く噛んだ。
 その刺激にも身体は反応し、身体が熱く、ウィルと繋がった箇所が溶けそうだった。
 ただ下腹部から与えられる快感だけが鋭い刺激を持って脳を痺れさせ、グランは反射的に喘ぐ。
 フェイントのように悦いところを突かれ、グランはビクビクと全身を震わせた。
ひっきりなしに肉体が小刻みに震え、ひと突きごとに嬌声が漏れ、追加で達する。
 感度が高く紅潮した頬に、零れた涙が伝い、涎と一緒に顔の輪郭に沿って流れ落ちていく。
グランはぎゅっとシーツを握りしめていた。その手の甲の上にウィルが手を重ねると、相手から熱が伝わった。

 ウィルがグランの背中越しに、耳元に口を寄せる。
「僕の名前は分かる?」
「???」
「ウィルって呼んでみてよ」
「うぃ…る……」
「そう」
ぐい、と強く前立腺を擦られ、グランは高い声で啼いた。

 ウィルはメモどころではなくなり、完全に筆記具に触れなくなっていた。
彼が時々手にしていた、あれはなんだろう? 少しばかりグランは疑問に思ったが、思考はすぐに快楽の海に沈む。

「んっ……んはぁっ……」
 水音と腰を打ち付ける音、グランの喘ぎだけが静かに部屋に響く。ウィルの身体はうっすらと汗をかき、同じく汗だくのグランの身体と擦れ合う。
 しばらくそうしているうちに、グランはだらしなく開いた唇から言葉を発した。

「なか……っ、だして……」
ウィルは深い息をつきながら応える。
「出したら大変なことになるよ?」
「いい」
グランはその男の気遣い、とは気付かず、やりとりを疎ましく思った。

(だしてくれなきゃ、こども、ふやせない……)

「名前、呼んでくれたら出してあげてもいいよ」
朦朧とした頭で、グランは大人しく従う。
「うぃる」
「そう、良い子だね」
グランの中で、ぎちっ、と男の一物が固さを増した気がした。

 男が体勢を変える。
 グランの背中に両腕を回させ、後ろ手に引っ張る。
グランは上体をベッドから離され、膝立ちで不安定な姿勢になる。ぎしり、と腕が軋む感覚を味わう。
 ウィルはそのまま抽送を始めた。男の杭に奥を突かれ、引き抜かれる度に、グランの浮いた上半身がガクガクと揺れた。
引っ張られた腕が痛んだが、それもすぐに慣れ、被虐的な快感に変わっていた。

「うぃる?」
 グランは再びその名を口にした。
男が熱く荒い息を吐き、やや乱暴にグランを突く。

「……っは……」
今までの緩いグラインドとは違う、早く、獣のような動きに変わる。
 自分が喰われている、グランがそんな錯覚を抱くほどに激しい。

「……っん、ぐ……うぃるぅ……」
その言葉を口にすると、男の激しさが増す。
 グランはウィルに夢中で腰を打ち付けられ、ただ与えられる快感に喘ぐ。グランも熱に浮かされたように夢中でその名を呼んだ。
 しばらくグランの嬌声と身体を穿(うが)つ音が部屋に響く。
 やがてグランが待ち焦がれた時が訪れ、「出すよ?」とウィルが余裕のない声で言い、勢いよくグランの中に精を吐き出した。

 いつもより長く射精したそこは、グランの身体の中でどくどくと脈動する。たっぷり中に注がれ、熱がグランの中を満たした。
 ウィルが引き抜くと、菊座から白い液体がどろりと溢れ、グランはそこに穴が空いたような錯覚に囚われる。男の代わりに冷たい外気が体内に入るのをグランは感じた。
 身も心も満ち足りた気分だった。高揚感の中、グランはウィルから解放され、満足そうな表情を浮かべ、力なくベッドの上に突っ伏した。



「それじゃ、終わりにしようか」
ウィルは立ち上がり、作り付けの戸棚からタオルと薬箱を下ろす。
背孔に指を潜らせてカギ状に指を折り曲げ、精液を掻き出す。誘われるままに中出ししてしまったが、グランはこの後に腹痛に悩まされるだろう。せめて原因を綺麗に取り除かないといけない。
 タオルでグランの身体を清めると、次に薬箱からクリアハーブを取り出す。
それをグランの口元に寄せると、グランは顔を背けた。

(たべたら、こども……しんじゃう……)

それは魔物の本能から来る思考だった。
「駄目かい?」

ウィルはクリアハーブを自分の口の中に入れ、唾液と絡ませながら噛む。中身が液状になったところで、グランにキスをして、唇を舌で上下に割り、無理矢理に口内に流し込んだ。
 グランはもちろん吐き出そうとしたが、ウィルは舌を突き入れて薬を口腔に押し込んでいく。鼻を摘まむと、グランは一度嗚咽をして、反射的に薬草を飲み込んだ。

「……げほっ……」
小さく咳をしながら、グランはうつむき、喉を押さえる。
しばらくそうして、グランが顔を上げたときには、いつもの表情に戻っていた。
はっきりと焦点の合ったブラウンの瞳で、ウィルを見詰める。

「……」
「あ、元に戻った?」
グランの顔はたちまち赤くなり、拳を振り上げた。そのままウィルの頭や肩や胸板をポカポカと叩く。
「馬鹿! ウィルの馬鹿! 何てことするんだよ!」
「あれ、記憶あった? いつから覚えてる?」
「名前を呼ばされたあたりからぼんやり覚えてるよ! 馬鹿!」
「意識が戻ったのに、名前を呼んでくれたんだ?」
「……っ、意識はあったけど、まだ頭も体も自由に動かなかったんだよ!」
「ああ、そうなんだ」
ウィルはノートにそれを書き込む。グランはますます苛立った。
「そうなんだー、じゃないよ! 恋人にする仕打ちとは思えない!」
「いやでも、君のおかげでいい結果が取れたよ」
ご機嫌に笑うウィルに、グランは怒り心頭だった。
「僕より観察が大事なんだ?」
そして、ウィルが記帳していたノートを手に取ると、腕に力を込める。
「あ、ちょっと待って! それはやめてくれないかい? 何でもするから!」
「何でも? これを抹消することが僕の望みだよ!」
クンフーになったグランの腕力は半端ない。思い切り力を込めて、ビリビリとノートを破っていく。
「あああ……何てことを!」
ウィルが力なく膝をつく。グランは服を着直して、ポケットにそれをねじ込む。
「これ、僕がちゃんと始末するからね!」
怒った声でそう言い、背中を向ける。耳まで真っ赤だった。

 ベッドから降りようとして、グランはかくりと床の上に尻餅をつく。
「あ、あれ……」
グランは呆けた。
立とうとするも、足ががくがくして力が入らない。
「あれだけイけば、そうなるだろうね」
他人事のように言い、ウィルはグランに手を貸して立たせる。一度立ってみると、グランは足を震わせながらなんとか立てるようになった。
 ウィルがそんなグランを見下ろす。
「そういや射精してないんじゃない? 出させてあげようか」
「ねえ、僕がまだ出来るように見える……?」
「いいや、全然」
微笑を浮かべたウィルを、グランはジト目で見た。
「泊まっていったら?」
ウィルの言葉に、グランは困った顔で応える。
「団長室を空にする訳にはいかないよ」
例えば、団員の誰かが夜中にグランを訪ねるかもしれない。そんなときに留守がバレれば、当然どこにいるのかを探すだろう。
 ウィルの部屋に泊まっていることが知られたら、それは一夜を共にする仲だと知られてしまう。
 勿論、恋人のことは好きだ。が、グランには男同士と言うことにまだ抵抗があった。
 グランはそんな自分をズルいとは思っている、それでも事実の露見をグランは心の奥底で恐れていた。

 ウィルはフフッと笑った。
「僕が恋人だと他の人にバレるの、そんなに恥ずかしいのかい?」
グランは息を飲んで押し黙る。ウィルはにこにこと笑ってグランを見ている。
「……っ、そんな訳じゃないんだ。でも、ごめん、まだ僕には覚悟ができてない」
「知ってる」
ウィルはグランの服が乱れているのを直しながら言った。
「君は正直だね。つい意地悪しちゃったよ」
そして、ウィルはグランの頭にぽん、と手を置く。
「おやすみ」
「……おやすみ」
グランは少ししょげた顔をして、ウィルの部屋を後にした。

 グランの足音が遠ざかっていくのを聞きながら、ウィルは情事の後始末を始めた。
 先ほどのやりとりを思い出すと、ひとりでに頬が緩む。
 ウィルは、グランの恋人、という地位を他人に認められたいなんて欲求は全く持っていない。
 それはウィルの価値観とはかけ離れたものだ。彼がそばにいて観察できればそれで良い。
 ただ、真面目な彼が思い悩むのがどうしようもなく好きだし愛しい。
 それが彼の心を蝕むことになっても、そこに自分の存在があることが楽しい。
 同性愛なんて、どうということはない。魔物を愛する男は、人間であることすら厭わないのだ。
 そして、立ち上がると、本棚から新しいノートを出す。記憶のある限り、先ほどの研究のことを書き連ねた。そして、ほぼ一字一句違わぬグラン観察日記が出来上がった。

「これでよし、と」

他の分厚いノートの中にそれを挟み、表から見えないようにカモフラージュして、ウィルは本棚にしまった。



後編 妊娠編に続く