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とらのあなに色々と委託中です。ウィルグラ再録本ウィルグラ本ベアトリクス乱交本

2016年2月23日火曜日

バレンタインSS まものとはんぶんこ


 今日はバレンタインデー。グランは団長として、男ながらも団員たちにチョコレートを配っていた。日頃の感謝の気持ちを込めてである。
 グランは魔物研究家であるウィルの部屋をノックして、出てきたウィルにチョコレートを差し出す。

「はい、これ。いつも有難う」
「ああ、今日はセントバレンタインか。僕にくれるのかい
「うん。エンジェルヘイローと慰籍ヒールにお世話になってるから」

ウィルは柔和な笑顔を浮かべた。

「ちょうど良かった 甘いものが好きな魔物がいるから、一緒に分かち合うよ」

グランの表情が少しだけ曇る。

「いいよ、魔物に全部あげても」
「そういう訳にもいかないさあ。ちゃんと僕も食べるよ」

グランはジト目でウィルを見る。

「そんな気を遣わなくていいよ。どうせあげるんでしょ
「どうしてそんな意地悪なことを言うのさ」

ウィルはそう言って、グランを部屋に招き入れる。
「食べるとこ見てくかい あの子、ずいぶん元気になったよ」

部屋の中にはイービルアイがふわふわと飛んでいる。コウモリの羽を生やした巨大な目玉のお化けだ。
 グランが初めて見たときよりは身体がふっくらとしていて、表皮のツヤもいい。

 彼は富豪のペットとして遠くから密輸で連れてこられて飼われていたものの、飽きたので処分されるところだった。そこをウィルが救助して、今は元の住みかに帰す途中である。ウィルが懸命に介抱しているのは知っていたが、なかなかの回復具合だった。
 グランはその様子に感心して言った。

「甘いものが好きな魔物って、その子だったんだ
「金持ちの家で飼われてたからね。その時に味を覚えたんだと思うよ」
ウィルはグランのチョコの包み紙をガサガサと剥がす。

 グランはイービルアイを見た。
 目玉の周りには、人間のまつ毛の代わりにぐるりと牙が生えている。かなり大きく鋭い牙だ。

「放し飼いで大丈夫 牙が凄いけど」
「大丈夫だよ、僕がちゃんと面倒見てるからね」

そして、ハート型のチョコレートをパキリと半分に割ると、手を伸ばしてイービルアイに差し出した。
「はい、あーん」

その瞬間。

 ガブリッ、と鈍い音がして、ウィルの右腕の肘から上までがイービルアイの口の中に入っていた。
 腕ごとチョコレートを喰われている。

「面倒見切れてないじゃないか

グランが焦って魔物に向かうと、ウィルは空いている方の手でグランを制した。

「待って」

そうして、空いている方の手でイービルアイの頭頂部を撫でると、彼はおずおずと口を開いてウィルの腕を解放した。ウィルの右腕は笑ってしまうくらい血まみれだった。

「神の加護を」

ウィルは自分で治癒魔法をかける。血まみれの腕はすっかり綺麗になっていった。

「器用だね」
なんとも言えずにグランはそう返す。

「人間に虐待された経験があるとね、手を伸ばされると傷つけられると思うみたいなんだ。だから、こうするのさ」
ウィルはそう言って、今度はチョコの欠片を口でくわえてイービルアイに差し出す。

「ち、ちょっと
今度は首ごと喰われる様子を想像して、グランは止めようとしたがもう遅い。

 イービルアイはウィルに接近し、口を開け……大人しくウィルから口移しでチョコを受け取った。

 呆気にとられてグランはそれを見、次にどっと疲れが出るのを感じた。

「もう、心配させないでよ」
「心配してくれたんだ
「当たり前だろ それじゃ、僕行くから」
「待って。グラン、チョコ配りで疲れてるだろう。一口食べていきなよ」

ウィルはチョコをまた割ると、グランの口元に手を伸ばして差し出した。

「はい、あーん」

グランは一歩下がった。

「やめてよ、子供じゃあるまいし」
「子供だろう ほら、あーん」

「魔物じゃあるまいし」
ウィルは楽しそうにフフッと笑った。
「ルリア君と命を分け合ってるんだ、半分は魔物みたいなものだろう
「……」

有無を言わせぬ顔だった。
 グランの反応がないと見るや、ウィルは今度は口にくわえて口移ししようとした。端正な顔が近づき、グランは慌てて声を出す。

「ちょっと!!
グランは思い切り後ずさった。

「要らないのかい
ウィルが不思議そうにグランを見つめる。

「男同士で何やってるのさ
「性別は関係ないと思うけど」
「あるよ それに僕、初めてだし、こういうの困る」
「僕も人間とは初めてさあ」

グランは笑顔のウィルの頬を軽くつねる。
 ウィルは体を引くと、ずれ落ちた眼鏡を人差し指でついと上げた。

「あれ、そんなに口移しは嫌だったかい
「口移しじゃなくてキスだろ 僕、もう本当に行くからね。バイバイ

グランはやり場のない怒りを抱えてウィルの部屋を去る。
 そして、再びどっと疲れが出るのを感じた。

「どうせなら、もっとちゃんとした形が良かったなあ」
ウィルには分からないだろうな、と思いながら。

 部屋に残されたウィルは、グランの態度を不思議に思いながらチョコレートの残りをかじった。疲れが取れるような甘さだった。ウィルはイービルアイを見て言った。

「もっとロマンチックなのがお好みだったのかな」
イービルアイは無言でチョコレートをもしゃもしゃと食べていた。