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2016年2月23日火曜日

早朝のバレンタイン


 早朝、バタバタと騒がしい足音が、グランサイファー号のランスロットの部屋に迫る。
 この足音の主は見なくても分かる。幼なじみのヴェインだ。
 バァンッと勢いよくドアを開け、ずかずかとランスロットの部屋に入ると、閉まったカーテンを勢いよく引く。暗い部屋の中が、たちまち目映まばゆい朝日に満ちた。

「おはよーランちゃん 今日も良い天気だぜ
「おはよう……眩しいな……」

ランスロットは言葉とは裏腹に、布団を頭の上まで引き上げ、布団の世界へと沈んでいく。
 ヴェインがランスロットの布団を勢いよく剥ぐ。
 ランスロットは黒い瞳を擦りながら、至極しごく眠そうに、また不服そうにヴェインを見た。
 ヴェインが元気いっぱいの声で朗らかに言う。

「ランちゃん低気圧だなー
「低血圧の間違いだろう……」
「それそれ。俺、よく間違えるんだよなー」
「お前は朝から元気だな」
「俺は朝の素振りも済ませてきたぜ ランちゃんも朝練やろうぜ

ヴェインはランスロットの頬を両手で挟んでわしわしと撫で回す。

「やめろ」
ランスロットはうるさそうにヴェインの両手首を掴んで退かそうとし、そのまま自分の頬へと両手を戻させる。
「……いや、やめなくていい。これはこれで目が覚める」
「だっろー

ヴェインの手を頬に添えさせ、ランスロットは目を細めた。

「お前の手は温かいな」
「よく言われるぜ。子供体温ってやつだな
「昔からそうだったな」

しばらくヴェインの手から伝わる体温を味わってから、ランスロットは上体を起こした。
そして、寝間着から甲胄の下に着る用のインナーへと着替えると、部屋の鏡に向かって乱れた髪を直す。
寝癖のひどい黒髪に、そのまま整髪料をつけてわしゃわしゃと揉む。
すると、いつものランスロットの髪型が出来上がった。

「ちょっ、ランちゃん。いつもそんななの
「そうだが

驚くヴェインに、何を今更と言ったふうでランスロットが応える。

「せめてこう、髪をかしてから……ああっ、俺、クシなんて持ち歩いてねーよ」
ヴェインがポケットやカバンをせわしなくパタパタと開けながら言う。
「別に、必要ないぞ」
「ランちゃんの髪型がそんな感じに出来上がってるなんて知らなかったよ」
「言う必要ないからな」
「ズボラすぎるだろ」
「そうか この長さは髪がはねやすいしな」
「ランちゃんも俺みたく短くしたら

ヴェインが自身の短く刈り上げた首の後ろを撫でる。そして、慌てて言い直した。

「あっ、ウソウソ 俺、ランちゃんのその髪型好き

いつも通りの幼なじみの反応に頬を緩め、ランスロットはフフッと笑う。
 ヴェインは元気よく言う。

「朝飯食いに行こうぜー、俺お腹空いた」
「そうだな」
「あ、その前に

ヴェインは鞄の中から細長いプレゼントボックスを出す。

「ハッピーバレンタイン
「そういえば今日だったか。ありがとう。今年も手作りか
「当たり前だろ。ランちゃんモテるから、最初に渡そうと思って」

嬉しそうなランスロットの表情に、ヴェインもつられて笑う。

「毎年貰ってばかりだからな、今年は俺も用意した」

そして、ランスロットは部屋を漁り始める。散らかった部屋のあちこちを探し回って、ようやくベッドの下から細長いプレゼントボックスを探し出した。

「ほら、ハッピーバレンタイン」
「あれ、俺の箱と似てる
「先週、台所でお前がソレを作ってるのが見えたからな。ちょっと思いついて似たようなのを買った」
「マジで バレてた!?
「あれだけ女の子がいたら、そりゃあな」
「なんか女の子達に頼まれてさ、みんなで作ってたんだよなー。男は俺とローアインだけだったぜ」
「知ってるぞ」

そして、ランスロットはヴェインのプレゼントを開け始めた。ランスロットが包装紙をビリビリと破る一方で、ヴェインは丁寧に包装紙を剥がしていく。
 ランスロットは細長いクッキー生地にチョコレートをかけた菓子を手に取り、その細身をしげしげと眺める。

「綺麗だな。ヴェインはよく作れるな、こういうの」
ランスロットが感嘆して言う。

「細さに挑戦してみたぜ
そして、ヴェインもランスロットからの箱を開ける。
「ランちゃんからのチョコ、嬉しー」

そしてヴェインの目に映ったのは、チョコではなく、干し肉を細長く形成したものだった。

「はっ!? ビーフジャーキー!?

ヴェインは面食らった顔をすると、わざと怒った口調で笑いながら言う。

「ランちゃんまでパーさんみたいに俺のこと犬扱いすんの

ただ、ネタとはいえ、それなりに酒のつまみとしてはいい値段のものだとヴェインは知っている。

 ランスロットは無言で笑顔を浮かべ、ヴェインのビーフジャーキーを手に取る。そして、ヴェインの手にはチョコがけのクッキーを握らせる。
 それを剣に見立て、チャンバラのようにカンカンと身を当てると、ヴェインの口元に切っ先を当てる。
 ランスロットの目論見に気付いたヴェインは、真似をしてランスロットの唇にクッキーを向ける。

そして、二人は仲良く噛り付いた。

「ランちゃん」
「何だ

ブフッ、と我慢できない様子でヴェインか吹く。

「俺達、馬鹿みたいじゃね

ランスロットも吹いた。
「そうだな」

「これはデザートにして、朝メシ食いに行こーぜ
「ああ」

すっかり目の覚めたランスロットは、ヴェインの後に続いて食堂へ向かった。